上海の皆既日食

21世紀で最長持続時間の皆既日食に興味があった。残念ながら日本での観測は屋久島周辺に限られる。しかし中国に目を向けると、日食帯は中国大陸を横断。そこで一計を案じて、日食当日に上海出張の予定を入れる。当時中国を担当していたので、自由に出張スケジュールを決められたのである。
上海での食の中心は9時半。日食当日8時半。オフィスの窓から部分食が始まるのを確認。残念ながら天気予報は曇り。部分食も雲に隠れがちになる。
9時。オフィス近くの公園に向かう。空は雲りだが心持ち日の光が弱いようだ。公園には多くの中国人が集まっていた。晴れ間を期待して皆皆既日食を待つ。
ところが一転にわかに掻き曇り、降り出したのは大粒の雨。かなり激しく戸外にいられない。公園の中央に東屋がありそこに駆け込む。多くの中国人も行動は同じで、たちまち東屋は満員電車状態。次第に辺りは暗くなる。暑さで汗が流れる。雨は止まず、結局皆既日食の時間は中国人の人いきれの中で迎えたのだった。
少し雨が弱まり東屋を出る。街は夜。商店と屋台の灯が眩しい。昼間に突然夜が現れるのは、こんなに違和感があるものなのか。理屈で分かっていても感情が着いていかない。歩いてオフィスに帰るだけが、不穏な行動をしている気分になる。10分足らずの闇の時間が記憶に残る長さに感じた。
上海で皆既日食は見れなかった。しかし皆既日食を体験した。それは確かに体験した人しか分からない感覚だった。







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